他社撤退、販路消滅の危機から「不動産プラグインシリーズ」販売事業を立ち上げて一年。見えてきた課題とこれから

自社で不動産プラグインシリーズの販売事業を立ち上げてから、2025 年 11 月で一年経ちました。

いい機会なので、この一年の取り組みと、実際に運営してきたからこそ見えてきた課題を整理し、今後に役立てたいと思います。

まずは経緯から

「不動産プラグインシリーズ」を取り扱うことになった大まかな経緯は、次の通りです。

  1. A 社(仮名)が運営する EC サイト(以下、「旧サイト」)で販売していたが、事業撤退を発表→EC サイト閉鎖へ
  2. 販路消滅の危機
  3. 自社で販売事業を立ち上げ

これまで何度も聞かれたので「ああ、もっと認知向上のため情報発信していかないとな」と、改めて思います。

このプロジェクトをどう捉え、取り組むべきか

ところで、このプロジェクトは「自社で EC サイトを作って販売すればいい」という単純な話ではないです。

自社ではこのプロジェクトを次のように捉えました。

本プロジェクトは単に EC サイトを作ればいい話ではなく、事業承継に近い難易度の高さがある。過去に A 社との付き合いはないため、引き継ぎや後押しは期待できない。「実績ゼロの新規事業」を立ち上げるつもりで取り組むべき

つまり、制限がある中で既存ユーザーへの影響を極力少なくする必要があります。経験則ですが、新規立ち上げやリニューアルよりも、何倍も難しいです。

というわけで、様々な取り組みの中でポイントとなったものを以下にまとめました。

販売事業立ち上げまでに取り組んだこと

密なコミュニケーション

GitHub で課題と進捗の管理を行い、週次ミーティングで報告会を実施しました。(現在は運用ルールをほぼ確立できたので、月次に切り替えました)

さらに、テキストのみのコミュニケーションは誤解や摩擦が発生しやすいので、会話の機会を多めに確保することを心がけました。(自社でいつもやってることです)

「プロジェクトを進めるにあたって、気になること、共有したいことがあれば、ミーティングの日じゃなくても全然 OK です。些細なことでも連絡してください(お客さんにいつも言っていることです)」

という調子で、プロジェクト関係者には何度も伝えましたし「ちょっと通話できますか?」と何回も持ちかけて、会話でのコミュニケーションを大切にしました。

EC サイトの構築

A 社と協議し、旧サイトの閉鎖期限が設定され、自社で EC サイト(以下、「新サイト」)を作る方針に決まりました。

次に道具の選定ですが「WordPress の製品を販売するんだし、WordPress で作ればいいんじゃないか?」という話になって、

  • Nishiki Pro(WordPress テーマ)
  • Nishiki Pro for WooCommerce(WooCommerce 最適化プラグイン)

という、どちらも自社製品を使った構成で、超高速で立ち上げました。

他社製品を使用している場合、機能追加の要望や不具合などのフィードバックをこまめに送ったとしても、対応してくれるかどうかは開発元に委ねざるを得ないデメリットがあります。

ここで、本プロジェクトをどう取り組めばいいかを改めて確認しましょう。

本プロジェクトは単に EC サイトを作ればいい話ではなく、事業承継に近い難易度の高さがある。過去に A 社との付き合いはないため、引き継ぎや後押しは期待できない。「実績ゼロの新規事業」を立ち上げるつもりで取り組むべき

これが大前提なので、何が起こるか予想しづらい状況の中、潜在的な課題や懸念事項を増やしたくありませんでした。

その点、自社製品で何か気づいたことは自社で対応すればいいだけなので、上記のようなデメリットを抱える必要がないです。

製品の改修

ライセンス認証が必要な製品がほとんどで、新サイト向けに認証方式を変更する必要がありました。つまり、製品の改修が必要でした。

商標権の譲受

A 社が持っていた「不動産プラグイン」の商標を自社に移転(譲受)しました。移転については、過去の記事をご覧ください。

ユーザー引き継ぎ

旧サイトでは製品ごとに「年間ライセンス」という、一年間最新バージョンの製品ダウンロードとアップデートができる権利を販売していました。なので、新サイトでもその権利を引き継ぐ必要がありました。

引き継ぎは「旧サイトのユーザーにフォームから申請をしてもらう」運用にしました。

サポート窓口の開設

ユーザーからの要望や不具合報告など、フィードバックをいただく窓口として、Discord のフォーラムを立ち上げました。

フォーラムの利用は誰でも無料で投稿可能、閲覧可能です。

非公開で個別対応を希望する方は、有料のサポートチケットを購入してもらう、という運用をしています。

まだまだあるけど

もっとたくさんあるんですが、大まかなのはこれくらいです。

本格的にプロジェクトが始動したのが 2024 年 9 月からで、オープンが 11 月中旬なので、約 2ヶ月半で新サイト「WP 不動産オンライン」がオープンしました。

そして、現在まで大きな問題は発生してません。ここ重要!

今後の課題・やりたいこと

無事にオンスケジュールでサイトをオープンして一年が経ちましたが、大まかに次のような課題、やりたいことが見つかりました。

これもたくさんあるんですが、一部だけまとめました。

製品のデザインや UI 刷新

WordPress の使用歴が長ければ長い人ほど「不動産プラグインシリーズ」のことを知っていると思います。

歴史のある製品であるほど、刷新は「見た目を変えること」以上の意味を持ちます。それは伝統を壊す行為ではなく、価値を次の世代に正しく伝えるために必要な作業だと言えます。

「今の時代に合ったデザイン、UI に変えていきたい」という提案に対して、不動産プラグインシリーズの開発者(以下、「開発者さん」)は真摯に向き合い、随時対応しています。

製品ラインナップを増やす(特にテーマ)

自社で「Estate Hub」という不動産業界特化のブロックテーマをリリースしています。

これが結構売れている(また別記事で書きます)のですが、テーマはサイトの見た目を印象付ける重要な役割があります。

「他社との差別化を図りたい」といったニーズに応えられるよう、製品ラインナップを増やしたいですね。

パートナーとの協業関係を強化

前項にも関連しますが、自社ではパートナー制度を設けています。

プラグインやテーマを開発している方、普段からお仕事で不動産物件紹介サイトの制作をされている方は、パートナーとなることで次のような特典を設定しています。

  • 不動産プラグインシリーズをいつでも割引で購入
  • パートナーが開発したテーマやプラグインを、自社が販売代行(販路の確保)

個人・法人は問いませんので、やる気のある方、話を聞いてみたい方は、僕の X アカウントまでご連絡ください。

逆に「こういう形での協業ってアリですか?」みたいなご提案も歓迎します。いろんな可能性を探っていきたいので、ある程度は柔軟に物事を考えるようにしています。お気軽にご相談どうぞ。

まとめ

まとめと言うほどではないんですが、実務経験や技術がある程度必要なプロジェクトだったと思います。

実は今、別件でさらに難易度が高いプロジェクトが立ち上がるかどうかというタイミングでして、「超えられない壁はそもそも現れない」とも言いますし「過去に何してたっけ?」と振り返りたいときは、この記事を読み返したいと思います。

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